「Mitsubishi Debonair 1963」
時は60年代。やっと戦後の混乱から息をついた日本の自動車産業も次に目についたのはデザインの遅れだった。これだけは一朝一夕にマスターできるものでもなく、手っとり早くデザイン先進国のイタリアやアメリカの影響を受けざるを得なかった。そんな中で新三菱重工(現在の三菱自動車)が高級車のデザインの助っ人に招聘したのが元GMデザイナーのハンス・ブレッツナー氏だ。私個人アメリカのGMにはいたく心酔していて、デザイナーへの道を拙い手紙で尋ねたりしたのだが、そこで紹介されたのがハンスだった。早速名古屋の三菱の意匠課に彼を訪ね、質問攻めにしたのを覚えている。その時彼が手がけていたのがデボネアだった。そう云えばその頃のIZUMIYA(TOOLSの前身)は欧米のデザイン技術導入に熱心で、彼を招いてのセミナーもあったのを思い出す。デボネアは22年もの長きにわたって生産された事ゆえか「生きた化石」と皮肉られたそうだが、私にとってはとても親近感を感じる車の一つである。 児玉 英雄